专利详情

标题ポリペプチド架橋タンパク質分子インプリントポリマー及びその製造方法と使用
[标]当前申请(专利权)人南开大学
申请日2019年4月19日
申请号JP2020527963
公开(公告)日2022年1月26日
公开(公告)号JP7011349B2
授权日-
法律状态/事件授权
专利类型授权发明
发明人ヂャン ヨンジュン | シュ ロン | グァン イン
受理局日本
当前申请人(专利权)地址中華人民共和国 チアンジン ナンカイ ク ワイ ジン ロード 94
IPC分类号C08F220/56 | C07K1/22 | B01J20/26 | B01J20/34 | B01J20/30
国民经济行业分类号C2653 | C3521 | C2652 | C2651
代理机构-
代理人山田 強
被引用专利数量-
专利价值$ 620,000

摘要

【課題】温和な条件下でテンプレートタンパク質を完全に除去できるだけでなく、タンパク質分子インプリントポリマーのインプリンティング効果を大幅に向上する。

【解決手段】1)主モノマー、機能性モノマー、ポリペプチド架橋剤およびテンプレートタンパク質を混合し、水溶性溶媒に溶解して混合溶液を得るステップと、2)混合溶液に開始剤を添加し、ポリペプチド架橋剤がhelix構造で存在する条件下で重合するステップと、3)ポリペプチド架橋剤がcoil構造で存在する条件下でテンプレートの溶出を行い、ポリペプチド架橋タンパク質分子インプリントポリマーを得るステップと、を含み、前記ポリペプチド架橋剤は、アミノ酸配列の両端に重合可能な二重結合を有し、且つhelix-coil構造変換を起こすことができるポリペプチドである。

【選択図】図3

【請求項1】

ポリペプチド架橋タンパク質分子インプリントポリマーの製造方法であって、

1)主モノマー、機能性モノマー、ポリペプチド架橋剤およびテンプレートタンパク質を混合し、水溶性溶媒に溶解して混合溶液を得るステップと、

2)ステップ1)に記載の混合溶液に開始剤を添加し、ポリペプチド架橋剤がヘリックス(helix)構造で存在する条件下で重合し、ステップ1)に記載の主モノマー、機能性モノマーおよびポリペプチド架橋剤により構成されるポリマーを得るステップと、

3)ポリペプチド架橋剤がコイル(coil)構造で存在する条件下でステップ2)に記載のポリマーに対して前記テンプレートタンパク質の溶出を行い、ポリペプチド架橋タンパク質分子インプリントポリマーを得るステップと、

を含み、

前記ポリペプチド架橋剤は、アミノ酸の数が5以上であり、アミノ酸配列の両端に重合可能な二重結合を有し、且つhelix-coil構造変換を起こすことができるポリペプチドである、製造方法。

【請求項2】

前記ポリペプチド架橋剤におけるアミノ酸の数は5~100であることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。

【請求項3】

前記ポリペプチド架橋剤におけるアミノ酸の数は5~30であることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。

【請求項4】

ステップ1)に記載の水溶性溶媒は、リン酸緩衝液、Tris緩衝液及びNaClO 4溶液のうち一種を含むことを特徴する請求項1~3のいずれか一項に記載の製造方法。

【請求項5】

ステップ1)に記載の主モノマー、機能性モノマー、ポリペプチド架橋剤及びテンプレートタンパク質の質量比は、(10~30):(0.5~2):(5~20):(5~20)であることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。

【請求項6】

前記開始剤は、過硫酸アンモニウム溶液とテトラメチルエチレンジアミン、過硫酸アンモニウム溶液と亜硫酸水素ナトリウム、過硫酸カリウム溶液とテトラメチルエチレンジアミン及び過硫酸カリウム溶液と亜硫酸水素ナトリウムのうち一つのグループから選択されることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。

【請求項7】

前記ポリペプチド架橋剤の構造状態は、円偏光二色性スペクトルCDによって検出され、CDスペクトルが222nm、208nmに負のピークを示し、190nm±5nmに正のピークがある場合にhelix構造であり、CDスペクトルが199nmに負のピークを示し、220nm±5nmに正のピークがある場合にcoil構造であることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。

【請求項8】

請求項1~7のいずれか一項に記載の製造方法により製造して得られたポリペプチド架橋タンパク質分子インプリントポリマー。

【請求項9】

タンパク質の濃縮、分離及び精製における、請求項8に記載のポリペプチド架橋タンパク質分子インプリントポリマーの使用。

【請求項10】

前記ポリペプチド架橋タンパク質分子インプリントポリマーは、ポリペプチド架橋剤がhelix構造で存在する条件下で標的タンパク質の吸着を行い、ポリペプチド架橋剤がcoil構造で存在する条件下で標的タンパク質の溶出を行うことを特徴とする請求項9に記載の使用。

【技術分野】



【0001】

本出願は2019年2月28日に中国特許庁に提出され、出願番号201910147938.9、発明の名称「ポリペプチド架橋タンパク質分子インプリントポリマー及びその製造方法と使用」の中国特許出願の優先権を主張し、その全内容は参照により本明細書に組み込まれる。

【0002】

本発明は生体分離工学の技術分野に属し、特にポリペプチド架橋タンパク質分子インプリントポリマー及びその製造方法と使用に関する。

【背景技術】



【0003】

分子インプリントポリマーは、抗体が抗原を特異的に認識することに示唆を得て提案された人工合成受容体のクラスである。抗体などの天然受容体と比較して、分子インプリントポリマーは、簡単な調製、良好な安定性、低コストという利点を有し、環境、ライフサイエンスなどの多くの分野で重要な用途がある。分子インプリンティングの一般的なプロセスは、(1)テンプレート分子の存在下で重合性モノマーと架橋剤とが重合し、(2)テンプレートを溶出して、ポリマーにおいてテンプレート分子との化学的および空間的に相補的なインプリンティング部位を残し、(3)テンプレート分子含有の溶液に改めて露出すると、インプリントポリマーは標的分子を認識し且つ選択的にそれに改めて結合できることである。

【0004】

小分子インプリントポリマーの研究は大成功を達成した。しかしながら、生体高分子のインプリンティング、特にタンパク質のインプリンティングは依然として困難である。タンパク質インプリンティングが直面する一番重要な問題は、テンプレートの溶出が難しいことである。これは、タンパク質の分子量が大きく、架橋ポリマーネットワーク内で拡散することが難しいためである。現在では、一般的にはいくつかの厳しい条件を使用してタンパク質テンプレートの溶出を行い、例えば高濃度の塩溶液(例えば1M NaCl)または酢酸/界面活性剤(SDSまたはTween-20)の混合溶液(一般的な配合成分は10%SDS/10%AcOH)で溶出を行う。トリプシンなどのタンパク質分解酵素を使用して、テンプレートタンパク質を消化することにより、このテンプレートタンパク質を除去することもできる。これらの処理は、テンプレートタンパク質の完全な除去を保証することができず、且つインプリントポリマーのネットワークの構造の変化、タンパク質の非特異的吸着およびインプリントされた部位の閉塞などの問題を引き起こすことがよくある。さらに深刻なことは、厳しい溶出条件がテンプレートタンパク質の変性、不活性化を引き起こして、溶出された標的タンパク質の使用価値を失わせる傾向にあり、しかも、タンパク質分解酵素消化法がテンプレートタンパク質を直接破壊するほどのこともある。タンパク質の濃縮、分離及び精製などのタンパク質インプリンティングの多くの使用では、活性のある標的タンパク質を回収する必要があり、そのため、厳しい溶出条件により、このようなインプリントポリマーは使用の価値を大きく失う。

【0005】

タンパク質インプリンティングが直面する2番目の深刻な問題は、インプリンティングの効果が悪いことである。タンパク質は水のみに溶解でき、且つ変性により不活性化されやすく、小分子インプリンティングで一般的に使用される有機溶媒は使用できず、水溶液のみでインプリンティングできる。これは、一方ではモノマーの選択を制限し、同時に水の存在のためテンプレートと機能性モノマーとの間に形成される水素結合を破壊し、テンプレートと機能性モノマーとの間の作用力を弱める。標的分子を認識するためには、ポリマーのインプリント部位のサイズと空間構成を維持する必要があるため、小分子のインプリントでは、ポリマーの架橋度は50%以上である場合が多い。しかしながら、タンパク質インプリンティングにおいてはテンプレートを除去しにくいため、低い架橋度しか使用できない。これらの理由により、従来のタンパク質インプリンティング材料のインプリンティング効果は理想的ではない。例えばChenらは、リゾチームをテンプレートタンパク質として使用したインプリントポリマーを開示している。該インプリントポリマーは、N-イソプロピルアクリルアミドを主モノマーとして、メタクリル酸とアクリルアミドを機能性モノマーとして、N、N’-メチレンビスアクリルアミドを架橋剤として重合したものであり、架橋剤の含有量は3.11mol%である。テンプレートタンパク質は1M NaClで溶出される。インプリント容量Qmは350mg/g dry gelであり、インプリント因子はわずか1.167(Z.Chen、et al.Journal of Molecular Recognition、2008、21(1)、71-77)である。

【0006】

タンパク質インプリントでは、テンプレート溶出が難しくインプリントの効果が低いという問題はその固有の問題ようであり、且つ2つの問題は互いに制約されており、同時に解決しにくい。人々が長期的に研究をした結果では、効果的な解決策がまだ見つからず、それによりタンパク質インプリンティングの見通しを曇らせる(Culver、H.R.、Peppas、N.A.、Chemistry of Materials、2017、29(14)、5753-5761)。

【発明の概要】



【発明が解決しようとする課題】



【0007】

この点を鑑みて、本発明はポリペプチド架橋タンパク質分子インプリントポリマー及びその製造方法と使用を提供することを目的とする。

【課題を解決するための手段】



【0008】

上記発明の目的を達成するために、本発明は以下の技術的解決手段を提供する:

ポリペプチド架橋タンパク質分子インプリントポリマーの製造方法であって、

1)主モノマー、機能性モノマー、ポリペプチド架橋剤およびテンプレートタンパク質を混合し、水溶性溶媒に溶解して混合溶液を得るステップと、

2)ステップ1)に記載の混合溶液に開始剤を添加し、ポリペプチド架橋剤がヘリックス(helix)構造で存在する条件下で重合し、ポリマーを得るステップと、

3)ポリペプチド架橋剤がコイル(coil)構造で存在する条件下でステップ2)に記載のポリマーに対してテンプレートの溶出を行い、ポリペプチド架橋タンパク質分子インプリントポリマーを得るステップと、

を含み、

前記ポリペプチド架橋剤は、アミノ酸配列の両端に重合可能な二重結合を有し、且つhelix-coil構造変換を起こすことができるポリペプチドである。

【0009】

好ましくは、前記ポリペプチド架橋剤におけるアミノ酸の数は2~100である。

好ましくは、前記ポリペプチド架橋剤におけるアミノ酸の数は5~30である。

好ましくは、ステップ1)に記載の水溶性溶媒は、リン酸緩衝液、Tris緩衝液及びNaClO4溶液のうちいずれか一種を含む。

好ましくは、ステップ1)に記載の主モノマー、機能性モノマー、ポリペプチド架橋剤及びテンプレートタンパク質の質量比は、(10~30):(0.5~2):(5~20):(5~20)である。

好ましくは、前記開始剤は、過硫酸アンモニウム溶液とテトラメチルエチレンジアミン、過硫酸アンモニウム溶液と亜硫酸水素ナトリウム、過硫酸カリウム溶液とテトラメチルエチレンジアミン、および過硫酸カリウム溶液と亜硫酸水素ナトリウムのうちいずれか一つのグループから選択される。

好ましくは、前記ポリペプチド架橋剤の構造状態は、円偏光二色性スペクトルによって検出され、CDスペクトルが222nm、208nmに負のピークを示し、190nm±5nmに正のピークがある場合にhelix構造であり、CDスペクトルが199nmに負のピークを示し、220nm±5nmに正のピークがある場合にcoil構造である。

【0010】

本発明は、前記製造方法により製造して得られたポリペプチド架橋タンパク質分子インプリントポリマーを提供する。

本発明は、タンパク質の濃縮、分離及び精製における、前記ポリペプチド架橋タンパク質分子インプリントポリマーの使用を提供する。

好ましくは、前記ポリペプチド架橋タンパク質分子インプリントポリマーは、ポリペプチド架橋剤がhelix構造で存在する条件下で、標的タンパク質の吸着を行い、ポリペプチド架橋剤がcoil構造で存在する条件下で、標的タンパク質の溶出を行う。

【発明の効果】



【0011】

本発明は以下の有益な効果を有する。

本発明により提供されるポリペプチド架橋タンパク質分子インプリントポリマーの製造方法は、従来の架橋剤(例えばN、N’-メチレンビスアクリルアミド)の代わりにポリペプチド架橋剤を使用し、ポリペプチド架橋剤が異なる条件下で異なる構造変化を生じるという特殊な性質を利用し、前記ポリペプチド架橋剤がhelix構造で存在する条件下で重合を行い、前記ポリペプチド架橋剤がcoil構造で存在する条件下でテンプレートの溶出を行う。前記ポリペプチド架橋剤がhelix構造からcoil構造に変換されるとき、タンパク質分子インプリントポリマーが膨張し、温和な条件下でテンプレートタンパク質の除去が達成される。前記ポリペプチド架橋タンパク質分子インプリントポリマーが使用されるとき、外部環境のパラメータを調整し、前記ポリペプチド架橋剤をcoil構造からhelix構造に再変換させることにより、タンパク質分子インプリントポリマー全体が収縮する。より重要なのは、ポリペプチド架橋剤がcoil構造からhelix構造に折り畳まれたときに非常に特異的であるため、タンパク質分子インプリントポリマーにおけるインプリンティング部位は、サイズと空間構成が完全に復元され、したがって標的タンパク質を特異的に認識することができる。

【0012】

本発明により提供されるポリペプチド架橋タンパク質分子インプリントポリマーは、温和な条件下でテンプレートタンパク質を完全に除去できるだけでなく、タンパク質分子インプリントポリマーのインプリンティング効果を大幅に改善できる。実施例1の記載によれば、本発明の前記方法で調製され文献(Z.Chen、et al.Journal of Molecular Recognition、2008、21(1)、71-77)と同じ配合成分のリゾチーム(lysozyme)をテンプレートとしたタンパク質インプリンティングポリマーは、その架橋剤含有量は依然として3.1mol%であり、一般的な架橋剤N、N’-メチレンビスアクリルアミドを実施例1に記載のポリペプチド架橋剤に変更するだけである。pH7.4リン酸緩衝溶液(生理的イオン強度のNaClを含有)を溶出液としてテンプレートタンパク質の完全な溶出を達成し、タンパク質吸着研究の結果は、新しく合成されたインプリントポリマーのインプリント容量Qmは679mg/g dry gelであり、インプリント因子は10.0であることを示した。引用文献(Z.Chen、et al.Journal of Molecular Recognition、2008、21(1)、71-77)のインプリントポリマーの最大吸着容量Qmは350mg/g dry gelで、インプリント因子は1.167である。引用文献に比べ、ポリペプチド架橋インプリントポリマーのインプリンティング効果が大幅に向上される。

【図面の簡単な説明】



【0013】

【図1】図1は、実施例1における異なる条件下でのポリペプチド架橋タンパク質分子インプリントポリマーのCDスペクトルであり、ポリペプチド架橋タンパク質分子インプリントポリマーにおけるポリペプチドセグメントを示す構造は、helixからcoilに可逆的に変化する。

【図2】図2は、テンプレートタンパク質吸着用のポリペプチド架橋タンパク質分子インプリントポリマーMIP及び対応する非インプリントポリマーNIPの等温線図である。

【図3】図3は、テンプレートタンパク質リゾチーム(Lys)ポリペプチド架橋タンパク質分子インプリントポリマーMIPおよび対応する非インプリントポリマーNIPによるさまざまなタンパク質への吸着結果である。

【図4】図4は、低塩および高塩溶液から溶出するテンプレートタンパク質リゾチームと未処理リゾチームの相対活性である。

【図5】図5は、卵白から抽出されたリゾチームのSDS-PAGE分析結果であり、そのうち、第1レーンはリゾチーム標準サンプルであり、第2レーンは未処理の卵白サンプルであり、第3レーンはポリペプチド架橋タンパク質分子インプリントポリマーで処理した卵白サンプルであり、第4レーンはポリペプチド架橋タンパク質分子インプリントポリマーで卵白を処理した後に低塩溶液で溶出したときの溶出液のサンプルである。



【発明を実施するための形態】



【0014】

本発明は、ポリペプチド架橋タンパク質分子インプリントポリマーの製造方法を提供し、それは、

1)主モノマー、機能性モノマー、ポリペプチド架橋剤およびテンプレートタンパク質を混合し、水溶性溶媒に溶解して混合溶液を得るステップと、

2)ステップ1)に記載の混合溶液に開始剤を添加し、ポリペプチド架橋剤がhelix構造で存在する条件下で重合し、ポリマーを得るステップと、

3)ポリペプチド架橋剤がcoil構造で存在する条件下でステップ2)に記載のポリマーに対してテンプレートの溶出を行い、ポリペプチド架橋タンパク質分子インプリントポリマーを得るステップと、

を含み、前記ポリペプチド架橋剤は、アミノ酸配列の両端に重合可能な二重結合を有し、且つhelix-coil構造変換を起こすことができるポリペプチドである。

【0015】

本発明において、前記ポリペプチド架橋剤は、アミノ酸配列の両端に重合可能な二重結合を有し、且つhelix-coil構造変換を起こすことができるポリペプチドである。本発明において、前記ポリペプチド架橋剤のhelix-coil構造変換は、好ましくは異なる条件下で生じる。本発明の具体的な実施プロセス中において、前記helix-coil構造変換の条件は、ポリペプチド架橋剤溶液温度の変化、pH値の変化及びイオン強度の変化等であってもよい。本発明は、前記helix-coil構造変換の条件について特別な要件がなく、helix-coil構造の変換が達成できる限り、異なるポリペプチド架橋剤の種類に基づいて決定される。本発明において、前記ポリペプチド架橋剤の構造状態は円偏光二色性スペクトルによって検出され、CDスペクトルが222nm、208nmに負のピークを示し、190nm±5nmに正のピークがある場合にhelix構造であり、CDスペクトルが199nmに負のピークを示し、220nm±5nmに正のピークがある場合にcoil構造である。

【0016】

本発明は、前記ポリペプチド架橋剤におけるアミノ酸の数、種類及び配列について特別な要件がなく、アミノ酸配列の両端に重合可能な二重結合を有し、且つhelix-coil構造変換を生じることができるすべてのポリペプチドはいずれも、本発明に記載のポリペプチド架橋剤とすることができる。本発明の具体的な実施プロセス中において、前記ポリペプチド架橋剤におけるアミノ酸の数は、好ましくは2~100であり、より好ましくは5~30である。本発明の実施例に記載のポリペプチド架橋剤は、具体的には下記式I~式VIの構造のポリペプチドから選択することができる。



【化】





【化】





【化】





【化】





【化】





【化】





【0017】

本発明は、主モノマー、機能性モノマー、ポリペプチド架橋剤及びテンプレートタンパク質を混合して水溶性溶媒に溶解して混合溶液を得る。本発明において、前記主モノマー、機能性モノマーの種類は特に限定されず、本分野のタンパク質インプリントポリマーの調製における従来の主モノマーおよび機能性モノマーを使用してもよい。本発明は、前記テンプレートタンパク質の種類を特に限定するものではなく、あらゆる種類のタンパク質をいずれもテンプレートタンパク質として使用することができる。本発明において、前記水溶性溶媒は、好ましくはリン酸緩衝液、Tris緩衝液及びNaClO4溶液のうち一種を含むがこれらに限定されない。本発明において前記水溶性溶媒は、好ましくは濃度及びpH値が水溶性溶媒の種類及び具体的なポリペプチド架橋剤の種類に基づいて決定される。前記水溶性溶媒がリン酸緩衝液である場合、前記リン酸緩衝液の濃度は1~100mmol/Lであり、より好ましくは10~20mmol/Lであり、前記リン酸緩衝液のpH値は、好ましくは5.0~5.6である。前記水溶性溶媒がTris緩衝液である場合、前記Tris緩衝液の濃度は、好ましくは1~50mmol/Lであり、より好ましくは10~20mmol/Lであり、前記Tris緩衝液のpH値は、好ましくは7.0~10である。前記水溶性溶媒がNaClO4溶液である場合、前記NaClO4溶液の濃度は0.05~0.50mol/Lであり、より好ましくは0.1~0.3mol/Lである。本発明において、前記主モノマー、機能性モノマー、ポリペプチド架橋剤及びテンプレートタンパク質の質量比は、好ましくは(10~30):(0.5~2):(5~20):(5~20)である。本発明において、前記主モノマー、機能性モノマー、ポリペプチド架橋剤及びテンプレートタンパク質の総質量と水溶性溶媒の体積の比は、好ましくは(1~5):(5~15)である。

【0018】

本発明は前記混合溶液を得た後、前記混合溶液に開始剤を添加し、ポリペプチド架橋剤がhelix構造で存在する条件下で重合を行い、ポリマーを得る。本発明において、前記開始剤は、好ましくは過硫酸アンモニウム溶液とテトラメチルエチレンジアミン、過硫酸アンモニウム溶液と亜硫酸水素ナトリウム、過硫酸カリウム溶液とテトラメチルエチレンジアミン及び過硫酸カリウム溶液と亜硫酸水素ナトリウムのうちいずれか一つのグループから選択され、より好ましくは過硫酸アンモニウム溶液とテトラメチルエチレンジアミンである。前記開始剤として過硫酸アンモニウム溶液とテトラメチルエチレンジアミンを選択するとき、前記過硫酸アンモニウム溶液の質量濃度は、好ましくは1~20%であり、より好ましくは5~10%である。前記過硫酸アンモニウム溶液とテトラメチルエチレンジアミンの体積比は、好ましくは(8~12):1であり、より好ましくは10:1である。本発明において、前記混合溶液と前記開始剤の体積比は、好ましくは(25~50):(1~5)である。本発明において、前記重合時間は、好ましくは20~28hであり、より好ましくは24hである。前記重合温度は、具体的なポリペプチド架橋剤の種類に基づいて対応して調整され、前記ポリペプチド架橋剤がhelix構造で存在できるようにするものであればよい。

【0019】

本発明は、前記ポリマーを得た後、ポリペプチド架橋剤がcoil構造で存在する条件下で、前記ポリマーに対してテンプレート溶出を行い、ポリペプチド架橋タンパク質分子インプリントポリマーを得る。本発明において、前記溶出用溶出液は、好ましくは対応する水溶性溶媒と一致し、前記溶出のpH値又は温度は重合時とは異なる。本発明において前記溶出条件は特に限定されず、前記ポリペプチド架橋剤がcoil構造で存在できるようにするものであればよい。

【0020】

本発明は、前記調製方法で調製して得られたポリペプチド架橋タンパク質分子インプリントポリマーを提供する。

本発明は、タンパク質の濃縮、分離及び精製における前記ポリペプチド架橋タンパク質分子インプリントポリマーの使用を提供する。本発明の具体的な実施プロセス中において、前記ポリペプチド架橋タンパク質分子インプリントポリマーは、ポリペプチド架橋剤がhelix構造で存在する条件下で、標的タンパク質の吸着を行い、ポリペプチド架橋剤がcoil構造で存在する条件下で、標的タンパク質の溶出を行う。

【0021】

以下では実施例を参照しながら、本発明により提供される技術的解決手段を詳しく説明するが、それらは本発明の保護範囲への限定として理解されるものではない。

【実施例】



【0022】

実施例1

インプリントポリマーの合成:

200mg N-イソプロピルアクリルアミド、5mgアクリルアミド、4μLメタクリル酸、115mgポリペプチド架橋剤及び100mgテンプレートタンパク質リゾチームを2mL 20mM pH5.5リン酸緩衝溶液に溶解した。十分に混合した後、50 μL 10% APS及び5μL TEMEDを添加して重合を開始し、37℃で24時間反応させ、インプリントポリマーMIPを得た。非インプリントポリマーNIPの調製は、テンプレートタンパク質リゾチームが添加されていないことだけを除き、インプリントポリマーの調製と同じである。ポリペプチド架橋剤の構造は式Iに示すとおりである。



【化】





【0023】

テンプレートタンパク質の溶出:

37℃で20mM pH7.4リン酸緩衝溶液(生理的イオン強度をシミュレートするための0.154M NaClを含有)でタンパク質溶出を行った。溶出液の吸光度値を測定し、紫外分光光度計を利用して特定の波長での標的タンパク質の吸光度-濃度の標準曲線を描き、該曲線に基づいてタンパク質溶液の吸光度値を濃度値に変換した。結果は以下のとおりである。溶出液は毎回に100mLを使用し、1回目に溶出した後に溶出液におけるテンプレートタンパク質の濃度は0.927mg/mLであり、2回目に溶出した後に溶出液におけるテンプレートタンパク質の濃度は0.0474mg/mLであり、3回目に溶出した後に溶出液におけるテンプレートタンパク質の濃度は0.0037mg/mLであり、4回目に溶出した後に紫外分光光度計で溶出液にはテンプレートタンパク質の含有が検出されなかった。溶出率=溶出タンパク質総量/インプリンティングタンパク質総量、インプリンティングタンパク質総量は100mgであり、溶出率は97.8%である。最後に脱イオン水でインプリントポリマーを洗浄することで残留塩化ナトリウムを洗い流した。

【0024】

インプリンティング効果の検討:

20mM pH5.5リン酸緩衝溶液で異なる濃度のリゾチーム溶液を調製した。37℃で、MIP又はNIPを添加し、十分に吸着した後、紫外分光光度計で上澄み液におけるリゾチームの濃度を検出し、吸着量を計算した。吸着量の計算は、本分野の従来の計算方法を用い、文献Z.Hua、et al. Langmuir、2008、24,5773-5780を参照した。吸着等温線図(平衡タンパク質濃度-吸着量曲線)を描き、Langmuirモデルでカーブフィッティングを行い、得られたMIPのインプリント容量Qmは679mg/g dry gelであり、インプリント因子は10.0である。本実施例の配合成分は、引用文献における架橋剤の代わりに同じモル量のポリペプチド架橋剤を使用したことを除き、引用文献(Z.Chen、et al.Journal of Molecular Recognition、2008、21(1)、71-77)と同じである。引用文献(Z.Chen、et al. Journal of Molecular Recognition、2008、21(1)、71-77)のインプリントポリマーの最大吸着容量Qmは350mg/g dry gelで、インプリント因子は1.167である。引用文献に比べ、本実施例の調製したインプリントポリマーのインプリンティング効果は大幅に向上された。

【0025】

20mM pH5.5のリン酸緩衝溶液でそれぞれ0.4mg/mL濃度の様々なタンパク質溶液を調製し、リゾチーム、シトクロムc(Cyt C)、ヘモグロビン(Hb)、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)、ウシ血清アルブミン(BSA)、トリプシン抑制因子(Try)を含む。37℃で、MIP又はNIPを添加し、十分に吸着した後、上澄み液の吸光度の値を紫外検出し、吸着量を計算した。得られた様々なタンパク質のインプリント因子は、それぞれ10.48(Lysozyme)、3.70(Cyt C)、1.15(Hb)、1.57(HRP)、1.02(BSA)、1.24(Try)であり、インプリントポリマーはリゾチームを選択的に吸着できることを示す。

【0026】

比較例1

インプリントポリマーの合成:

200mg N-イソプロピルアクリルアミド、5mgアクリルアミド、4μLメタクリル酸、9mg N、N’-メチレンビスアクリルアミド(BIS)及び100mgテンプレートタンパク質リゾチームを2mL 20mM pH5.5のリン酸緩衝溶液に溶解した。十分に混合した後、50 μL 10% APS及び5μL TEMEDを添加して重合を開始し、37℃で24時間反応させ、インプリントポリマーMIPを得た。非インプリントポリマーNIPの調製は、テンプレートタンパク質リゾチームが添加されていないことを除きインプリントポリマーの調製と同じである。該配合成分は、文献(Z.Chen、et al. Journal of Molecular Recognition、2008、21(1)、71-77)と完全に同じである。実施例1におけるインプリントポリマーの配合成分と比べると、ポリペプチド架橋剤を同じモル量の一般的な架橋剤N、N-メチレンビスアクリルアミドに置き換えただけである。

【0027】

テンプレートタンパク質の溶出:

37℃で20mM pH7.4リン酸緩衝溶液(生理的イオン強度をシミュレートするための0.154M NaClを含有)でタンパク質溶出を行った。1回目の溶出率は35.77%であり、2回目の溶出率は5.52%であり、3回目の溶出率は2.85%であり、4回目の溶出率は0であった。総溶出率は44.14%である。結果は、この条件で溶出すると、半分以上のテンプレートタンパク質が依然として溶出に失敗したことを示す。実施例1で調製されたポリペプチド架橋インプリントポリマーは、同じ条件下でテンプレートタンパク質を完全に溶出できる。

ポリペプチド架橋剤で合成されたタンパク質分子インプリントポリマーのインプリンティング実験と対比するために、残りのテンプレートタンパク質を完全に溶出するまで37℃で1M NaCl含有の20mM pH7.4のリン酸緩衝溶液でタンパク質溶出を行った。

【0028】

インプリンティング効果の検討:

MIPを1M NaCl含有の20mM pH7.4のリン酸緩衝溶液でタンパク質溶出を行い、テンプレートタンパク質を完全に除去した。20mM pH5.5リン酸緩衝溶液で異なる濃度のリゾチーム溶液を調製した。37℃で、MIP又はNIPを添加し、十分に吸着した後、紫外分光光度計で上澄み液におけるリゾチームの濃度を検出し、吸着量を計算した。吸着量は、本分野の従来の計算方法を用いて計算され、文献Z.Hua、et al.Langmuir、2008、24、5773-5780を参照した。吸着等温線図(平衡タンパク質濃度-吸着量曲線)を描き、Langmuirモデルでカーブフィッティングを行い、得られたMIPのインプリント容量Qmは387.0 mg/g dry gelであり、NIPの最大吸着容量Qmは210.9 mg/g dry gelであり、インプリント因子は1.83である。引用文献(Z.Chen、et al.Journal of Molecular Recognition、2008、21(1)、71-77)で報告されている結果と同等である。

【0029】

比較例1の配合成分は実施例1と基本的に同じであり、唯一の違いは、比較例1では一般的な架橋剤N、N-メチレンビスアクリルアミドを使用し、実施例1では同じモル量のポリペプチド架橋剤を使用したことである。ポリペプチド架橋剤を使用すると、温和な条件下でテンプレートタンパク質を完全に溶出できるだけでなく、インプリンティング効果も大幅に向上することがわかる。

【0030】

実施例2

インプリントポリマーの合成:

200mg N-イソプロピルアクリルアミド、2.5mgアクリルアミド、8μLメタクリル酸ジメチルアミノエチル、115mgポリペプチド架橋剤及び100mgテンプレートタンパク質ウシ血清アルブミン(BSA)を2mL 20mM pH5.5のリン酸緩衝溶液に溶解した。十分に混合した後、開始剤50 μL 10% APS及び5μL TEMEDを添加し、37℃で24h反応させ、インプリントポリマーMIPを得た。非インプリントポリマーNIPの調製は、テンプレートタンパク質ウシ血清アルブミンが添加されていないことを除き、インプリントポリマーの調製と同じである。ポリペプチド架橋剤の構造は実施例1と同じである。

【0031】

テンプレートタンパク質の溶出:

37℃で20mM pH7.4リン酸緩衝溶液(生理的イオン強度をシミュレートするための0.154M NaClを含有)でタンパク質溶出を行い、4回の溶出率はそれぞれ95.24%、2.05%、0.24%、0%であった。総溶出率は97.51%である。最後に、脱イオン水でインプリントポリマーを洗浄することで残留塩化ナトリウムを洗い流した。

【0032】

インプリンティング効果の検討:

20mM pH5.5リン酸緩衝溶液で異なる濃度のBSA溶液を調製した。37℃で、MIP又はNIPを添加し、十分に吸着した後、紫外分光光度計で上澄み液におけるテンプレートタンパク質ウシ血清アルブミンの濃度を検出し、吸着等温線図(平衡タンパク質濃度-吸着量曲線)を描き、Langmuirモデルでカーブフィッティングを行い、得られたMIPの最大吸着容量Qmは420.3mg/g dry gelであり、NIPの最大吸着容量Qmは54.4mg/g dry gelであり、インプリント因子は7.72であった。

【0033】

比較例2

インプリントポリマーの合成:

200mgのN-イソプロピルアクリルアミド、2.5mgアクリルアミド、8μLメタクリル酸ジメチルアミノエチル、9mgのN、N-メチレンビスアクリルアミド及び100mgテンプレートタンパク質ウシ血清アルブミン(BSA)を2mL 20mM pH5.5のリン酸緩衝溶液に溶解した。十分に混合した後、開始剤50μl 10% APS及び5μL TEMEDを添加し、37℃で24h反応させ、インプリントポリマーMIPを得た。非インプリントポリマーNIPの調製は、テンプレートタンパク質ウシ血清アルブミンが添加されていないことだけを除きインプリントポリマーの調製と同じである。

【0034】

テンプレートタンパク質の溶出:

37℃で20mM pH7.4リン酸緩衝溶液(生理的イオン強度をシミュレートするための0.154M NaClを含有)でタンパク質溶出を行った。1回目の溶出率は54.77%であり、2回目の溶出率は6.96%であり、3回目の溶出率は0.75%であり、4回目の溶出率は0であった。総溶出率は62.48%である。結果は、この条件で溶出すると、大量のテンプレートタンパク質が依然として溶出に失敗したことを示す。実施例2で調製されたポリペプチド架橋インプリントポリマーは、同じ条件下でテンプレートタンパク質を完全に溶出できる。

37℃で1M NaCl含有の20mM pH7.4のリン酸緩衝溶液でテンプレートタンパク質を完全に溶出するまでタンパク質溶出を行った。

【0035】

インプリンティング効果の検討:

MIPを1M NaCl含有の20mM pH7.4のリン酸緩衝溶液でタンパク質溶出を行い、テンプレートタンパク質を完全に除去した。20mM pH5.5リン酸緩衝溶液で異なる濃度のBSA溶液を調製した。37℃で、MIP又はNIPを添加し、十分に吸着した後、紫外分光光度計で上澄み液におけるテンプレートタンパク質ウシ血清アルブミンの濃度を検出して吸着量を計算し、吸着等温線図(平衡タンパク質濃度-吸着量曲線)を描き、Langmuirモデルでカーブフィッティングを行い、得られたMIPの最大吸着容量Qmは214.7mg/g dry gelであり、NIPの最大吸着容量Qmは126.3mg/g dry gelであり、インプリント因子は1.69であった。

【0036】

比較例2の配合成分は実施例2と基本的に同じであり、唯一の違いは、比較例2では一般的な架橋剤N、N-メチレンビスアクリルアミドを使用し、実施例2では同じモル量のポリペプチド架橋剤を使用したことである。ポリペプチド架橋剤を使用すると、温和な条件下でテンプレートタンパク質を完全に溶出できるだけでなく、インプリンティング効果も大幅に向上することがわかる。

【0037】

実施例3

インプリントポリマーの合成:

200mg N-イソプロピルアクリルアミド、5mgアクリルアミド、4μLメタクリル酸、51.74mgポリペプチド架橋剤及び100mgテンプレートタンパク質シトクロムC(Cyt C)を2mL 20mM pH5.5のリン酸緩衝液に溶解した。十分に混合した後、開始剤50 μL 10% APS及び5μL TEMEDを添加し、37℃で24h反応させ、インプリントポリマーMIPを得た。非インプリントポリマーNIPの調製は、テンプレートタンパク質シトクロムCが添加されていないことだけを除きインプリントポリマーの調製と同じである。ポリペプチド架橋剤の構造は実施例1と同じである。

【0038】

テンプレートタンパク質の溶出:

37℃で20mM pH7.4リン酸緩衝溶液(生理的イオン強度をシミュレートするための0.154M NaClを含有)でタンパク質溶出を行い、4回の溶出率はそれぞれ93.40%、2.06%、1.34%、0%であった。総溶出率は96.8%である。最後に、脱イオン水でインプリントポリマーを洗浄することで残留塩化ナトリウムを洗い流した。

【0039】

インプリンティング効果の検討:

20mM pH5.5のリン酸緩衝溶液で異なる濃度のCyt C溶液を調製した。37℃で、MIP又はNIPを添加し、十分に吸着した後、紫外分光光度計で上澄み液におけるテンプレートタンパク質シトクロムCの濃度を検出して吸着等温線図(平衡タンパク質濃度-吸着量曲線)を描き、Langmuirモデルでカーブフィッティングを行った。得られたMIPの最大吸着容量Qmは562.0mg/g dry gelであり、NIP的最大吸着容量Qmは79.6mg/g dry gelであり、得られたインプリント因子は7.1である。

【0040】

比較例3

インプリントポリマーの合成:

200mgのN-イソプロピルアクリルアミド、5mgアクリルアミド、4μLメタクリル酸、4mgのN、N-メチレンビスアクリルアミド及び100mgテンプレートタンパク質シトクロムC(CytC)を2mL 20mM pH5.5のリン酸緩衝溶液に溶解した。十分に混合した後、開始剤50 μL 10% APS及び5μL TEMEDを添加し、37℃で24h反応させ、インプリントポリマーMIPを得た。非インプリントポリマーNIPの調製は、テンプレートタンパク質シトクロムCが添加されていないことだけを除きインプリントポリマーの調製と同じである。

【0041】

テンプレートタンパク質の溶出:

37℃で20mM pH7.4リン酸緩衝溶液(生理的イオン強度をシミュレートするための0.154M NaClを含有)でタンパク質溶出を行った。1回目の溶出率は48.32%であり、2回目の溶出率は5.85%であり、3回目の溶出率は2.59%であり、4回目の溶出率は0である。総溶出率は56.76%である。結果は、この条件で溶出すると、大量のテンプレートタンパク質が依然として溶出に失敗したことを示す。実施例3で調製されたポリペプチド架橋インプリントポリマーは、同じ条件下でテンプレートタンパク質を完全に溶出できる。

37℃で1M NaCl含有の20mM pH7.4のリン酸緩衝溶液でテンプレートタンパク質を完全に溶出するまでタンパク質溶出を行った。

【0042】

インプリンティング効果の検討:

MIPを1M NaCl含有の20mM pH7.4のリン酸緩衝溶液でタンパク質溶出を行い、テンプレートタンパク質を完全に除去した。20mM pH5.5のリン酸緩衝溶液で異なる濃度のCyt C溶液を調製した。37℃で、MIP又はNIPを添加し、十分に吸着した後、紫外分光光度計で上澄み液におけるテンプレートタンパク質ウシ血清アルブミンの濃度を検出して吸着量を計算し、吸着等温線図(平衡タンパク質濃度-吸着量曲線)を描き、Langmuirモデルでカーブフィッティングを行い、得られたMIPの最大吸着容量Qmは328.4mg/g dry gelであり、NIPの最大吸着容量Qmは236.4mg/g dry gelであり、インプリント因子は1.39であった。

【0043】

比較例3の配合成分は実施例3と基本的に同じであり、唯一の違いは、比較例3では一般的な架橋剤N、N-メチレンビスアクリルアミドを使用し、実施例3では同じモル量のポリペプチド架橋剤を使用したことである。ポリペプチド架橋剤を使用すると、温和な条件下でテンプレートタンパク質を完全に溶出できるだけでなく、インプリンティング効果も大幅に向上することがわかる。

【0044】

実施例4

インプリントポリマーの合成:

200mgN-イソプロピルアクリルアミド、5mgアクリルアミド、4μLメタクリル酸、150mgポリペプチド架橋剤及び100mgテンプレートタンパク質リゾチーム(Lyz)を2mL 20mM pH5.0のリン酸緩衝溶液に溶解した。十分に混合した後、開始剤50 μL 10% APS及び5μL TEMEDを添加し、37℃で24h反応させ、インプリントポリマーMIPを得た。非インプリントポリマーNIPの調製は、テンプレートタンパク質リゾチームが添加されていないことだけを除きインプリントポリマーの調製と同じである。ポリペプチド架橋剤の構造は式IIに示すとおりである。



【化】





【0045】

テンプレートタンパク質の溶出:

37℃で20mM pH7.4リン酸緩衝溶液(生理的イオン強度をシミュレートするための0.154M NaClを含有)でタンパク質溶出を行い、溶出率は97.8%であった。最後に、脱イオン水でインプリントポリマーを洗浄することで残留塩化ナトリウムを洗い流した。

【0046】

インプリンティング効果の検討:

20mM pH5.0のリン酸緩衝溶液で異なる濃度のリゾチーム(Lyz)溶液を調製した。37℃で、MIP又はNIPを添加し、十分に吸着した後、紫外分光光度計で上澄み液におけるテンプレートタンパク質リゾチームの濃度を検出して吸着量を計算した。得られたインプリント因子は10.21である。

【0047】

実施例5

インプリントポリマーの合成:

400mg N-イソプロピルアクリルアミド、5mgアクリルアミド、16μL N-[3-(ジメチルアミノ)プロピル]-メタクリルアミド(N-[3-(dimethylamino)propyl]-methacrylamide (DMAPMA))、200mgポリペプチド架橋剤及び100mgテンプレートタンパク質BSAを2mL 10mM pH10.0Tris緩衝溶液に溶解した。30分間窒素で酸素除去し、50 μL 10% APS及び5μL TEMEDを添加し、室温で24h反応させ、インプリントポリマーMIPを得た。非インプリントポリマーNIPの調製はテンプレートタンパク質BSAが添加されていないことだけを除きインプリントポリマーの調製と同じである。ポリペプチド架橋剤の構造は式IIIに示すとおりである。



【化】





【0048】

テンプレートタンパク質の溶出:

37℃で10 mM pH7.4 tris緩衝溶液(生理的イオン強度をシミュレートするための0.154M NaClを含有)でタンパク質溶出を行い、溶出率は96.8%であった。最後に、脱イオン水でインプリントポリマーを洗浄することで残留塩化ナトリウムを洗い流した。

【0049】

インプリンティング効果の検討:

10mM pH10.0tris緩衝溶液で異なる濃度のBSA溶液を調製した。37℃で、MIP又はNIPを添加し、十分に吸着した後、紫外分光光度計で上澄み液におけるテンプレートタンパク質BSAの濃度を検出して吸着量を計算し、得られたインプリント因子は10.13であった。

【0050】

実施例6

インプリントポリマーの合成:

400mg N-イソプロピルアクリルアミド、5mgアクリルアミド、16μL N-[3-(ジメチルアミノ)プロピル]-メタクリルアミド(N-[3-(dimethylamino)propyl]-methacrylamide (DMAPMA))、210mgポリペプチド架橋剤及び100mgテンプレートタンパク質BSAを2mL 10mM pH10.0Tris緩衝溶液に溶解した。30分間窒素で酸素除去し、50 μL 10% APS及び5μL TEMEDを添加し、室温で24h反応させ、インプリントポリマーMIPを得た。非インプリントポリマーNIPの調製は、テンプレートタンパク質BSAが添加されていないことだけを除きインプリントポリマーの調製と同じである。ポリペプチド架橋剤の構造は式IVに示すとおりである。



【化】





【0051】

テンプレートタンパク質の溶出:

37℃で10mM pH7.4tris緩衝溶液(生理的イオン強度をシミュレートするための0.154M NaClを含有)でタンパク質溶出を行い、溶出率は98.2%であった。最後に、脱イオン水でインプリントポリマーを洗浄することで残留塩化ナトリウムを洗い流した。

【0052】

インプリンティング効果の検討:

10mM pH10.0tris緩衝溶液で異なる濃度のBSA溶液を調製した。37℃で、MIP又はNIPを添加し、十分に吸着した後、紫外分光光度計で上澄み液におけるテンプレートタンパク質BSAの濃度を検出して吸着量を計算し、得られたインプリント因子は10.96であった。

【0053】

実施例7

インプリントポリマーの合成:

400mg N-イソプロピルアクリルアミド、5mgアクリルアミド、16μL N-[3-(ジメチルアミノ)プロピル]-メタクリルアミド(N-[3-(dimethylamino)propyl]-methacrylamide(DMAPMA))、210mgポリペプチド架橋剤及び100mgテンプレートタンパク質BSAを2mL 0.2M NaClO4溶液に溶解した。30分間窒素で酸素除去し、50μL 10% APS及び5μL TEMEDを添加し、25℃で24h反応させ、インプリントポリマーMIPを得た。非インプリントポリマーNIPの調製は、テンプレートタンパク質BSAが添加されていないことだけを除きインプリントポリマーの調製と同じである。ポリペプチド架橋剤の構造は実施例6と同じである。

【0054】

テンプレートタンパク質の溶出:

25℃で0.154M NaCl溶液でタンパク質溶出を行い、溶出率は97.1%であった。最後に、脱イオン水でインプリントポリマーを洗浄することで残留塩化ナトリウムを洗い流した。

【0055】

インプリンティング効果の検討:

2mL 0.2MNaClO4溶液で異なる濃度のBSA溶液を調製した。37℃で、MIP又はNIPを添加し、十分に吸着した後、紫外分光光度計で上澄み液におけるテンプレートタンパク質BSAの濃度を検出して吸着量を計算した。得られたインプリント因子は10.38である。

【0056】

実施例8

インプリントポリマーの合成:

400mgN-イソプロピルアクリルアミド、5mgアクリルアミド、16μL N-[3-(ジメチルアミノ)プロピル]-メタクリルアミド( N-[3-(dimethylamino)propyl]-methacrylamide(DMAPMA))、200 mgポリペプチド架橋剤及び100mgテンプレートタンパク質BSAを氷水浴で10mM pH7.0Tris緩衝溶液に溶解した。30分間窒素で酸素除去し、50 μL 10% APS及び5μL TEMEDを添加し、0℃で24h反応させ、インプリントポリマーMIPを得た。非インプリントポリマーNIPの調製は、テンプレートタンパク質BSAが添加されていないことだけを除きインプリントポリマーの調製と同じである。ポリペプチド架橋剤の構造は式Vに示すとおりである。



【化】





【0057】

テンプレートタンパク質の溶出:

37℃で10mM pH7.0 tris緩衝溶液でタンパク質溶出を行い、溶出率は98.8%であった。最後に、脱イオン水でインプリントポリマーを洗浄することで残留塩化ナトリウムを洗い流した。

【0058】

インプリンティング効果の検討:

2mL 10mM pH7.0 tris緩衝溶液で異なる濃度のBSA溶液を調製した。0℃で、MIP又はNIPを添加し、十分に吸着した後、紫外分光光度計で上澄み液におけるテンプレートタンパク質BSAの濃度を検出して吸着量を計算し、得られたインプリント因子は10.87であった。

【0059】

実施例9

インプリントポリマーの合成:

400mgN-イソプロピルアクリルアミド、5mgアクリルアミド、16μL N-[3-(ジメチルアミノ)プロピル]-メタクリルアミド(N-[3-(dimethylamino)propyl]-methacrylamide(DMAPMA))、210mgポリペプチド架橋剤及び100mgテンプレートタンパク質BSAを氷水浴で10mM pH7.0Tris緩衝溶液に溶解した。30分間窒素で酸素除去し、50 μL 10% APS及び5μL TEMEDを添加し、0℃で24h反応させ、インプリントポリマーMIPを得た。非インプリントポリマーNIPの調製は、テンプレートタンパク質BSAが添加されていないことだけを除きインプリントポリマーの調製と同じである。ポリペプチド架橋剤の構造は式VIに示すとおりである。



【化】





【0060】

テンプレートタンパク質の溶出:

37℃で10mM pH7.0 tris緩衝溶液でタンパク質溶出を行い、溶出率は97.2%であった。最後に、脱イオン水でインプリントポリマーを洗浄することで残留塩化ナトリウムを洗い流した。

【0061】

インプリンティング効果の検討:

2mL 10mM pH7.0 tris緩衝溶液で異なる濃度のBSA溶液を調製した。0℃で、MIP又はNIPを添加し、十分に吸着した後、紫外分光光度計で上澄み液におけるテンプレートタンパク質BSAの濃度を検出して吸着量を計算し、得られたインプリント因子は10.96であった。

【0062】

実施例10

インプリントポリマーの合成:

200mg N-イソプロピルアクリルアミド、5mgアクリルアミド、4μLメタクリル酸、115mgポリペプチド架橋剤及び100mgテンプレートタンパク質リゾチームを2mL 20mM pH5.5リン酸緩衝溶液に溶解した。十分に混合した後、50 μL 10% APS及び5μL TEMEDを添加して重合を開始し、37℃で24時間反応させ、インプリントポリマーMIPを得た。ポリペプチド架橋剤の構造は式Iに示すとおりである。

【0063】

テンプレートタンパク質の溶出回収:

37℃でそれぞれ2種の異なる溶液でテンプレートタンパク質リゾチームの溶出を行った。第一種の溶液は、0.154M NaCl含有の20mM pH7.4のリン酸緩衝溶液であり、第二種の溶液は、1M NaCl含有の20mM pH7.4のリン酸緩衝溶液である。溶出液を透析により脱塩し、凍結乾燥し、回収されたテンプレートタンパク質リゾチームを得た。

回収されたリゾチームサンプルの円偏光二色性を測定し、元のサンプルと比較した。結果は、0.154M NaCl含有の20mM pH7.4のリン酸緩衝溶液で溶出して回収されたタンパク質の二次および三次構造にはほとんど変化がなかった。ただし、1M NaCl含有の20mM pH7.4のリン酸緩衝溶液で溶出して回収されたタンパク質の二次および三次構造は顕著な変化が発生した。結果は、温和な条件下でタンパク質溶出を行うと、タンパク質の高度な構造にはほとんど影響を与えず、高濃度の塩溶液でタンパク質を溶出すると、タンパク質の高次構造が破壊されることを示す。

ミクロコッカス·ルテウスを基質として使用して、回収された2つのリゾチームサンプルの生物学的活性を測定し、元のサンプルと比較した。温和な条件下で溶出したリゾチームサンプルの活性は依然として89%と高く、高濃度の塩溶液で溶出したリゾチームサンプルの活性はわずか8%である。これは、温和な条件でテンプレートタンパク質溶出を行うと標的タンパク質の活性を保存することに有利であることを示す。

【0064】

実施例11

実施例1で合成されたリゾチームインプリントポリマーを用いて、卵白からリゾチームを抽出した。卵白には148種のタンパク質が含まれており、その中のリゾチーム含有量は3-3.5%であることが知られている。

卵白からのリゾチームの抽出:

新鮮な卵白を20mM pH5.5のリン酸緩衝溶液で20倍に希釈した。20mgインプリントポリマーを添加し、37℃で10hインキュベートした。インプリントポリマーを取り出し、0.154M NaCl含有の20mM pH7.4のリン酸緩衝溶液で溶出し、吸着したリゾチームタンパク質を回収した。SDS-PAGEで抽出結果を分析した。第1レーンはリゾチーム標準サンプル、第2レーンは未処理の卵白サンプル、第3レーンはインプリントポリマーで処理した後の卵白サンプル、第4レーンはインプリントポリマー溶出液のサンプルである。結果は、実施例1で合成されたリゾチームインプリントポリマーは卵白からリゾチームを選択的に抽出できることを示す。HPLCで抽出結果を分析し、実施例1で合成されたリゾチームインプリントポリマーは卵白からリゾチームを選択的に抽出できることを再び検証した。HPLC結果から分かるように、この方法でリゾチームを抽出すると、回収率は96.3%と高く、製品純度は93.4%に達する。

ミクロコッカス·ルテウスを基質として使用して、抽出されたリゾチームサンプルの生物学的活性を測定し、得られたその相対活性は92%であった(元のサンプルに対し)。

【0065】

上記実施例から分かるように、本発明により提供されるポリペプチド架橋タンパク質分子インプリントポリマーの製造方法は、前記ポリペプチド架橋剤がhelix構造で存在する条件下で重合を行い、前記ポリペプチド架橋剤がcoil構造で存在する条件下でテンプレート溶出を行う。温和な条件下でテンプレートタンパク質の除去を実現でき、タンパク質分子インプリントポリマーにおけるインプリント部位はサイズと空間構成が完全に復元され、標的タンパク質を特異的に認識することができる。本発明により提供されるポリペプチド架橋タンパク質分子インプリントポリマーは、温和な条件下でテンプレートタンパク質を完全に除去できるだけでなく、タンパク質分子インプリントポリマーのインプリンティング効果を大幅に改善できる。

【0066】

上記は本発明の好ましい実施形態に過ぎず、当業者にとっては、本発明の原理から逸脱することなく、多くの改善および修正が可能であることに留意すべきであり、これらの改善および修正も本発明の保護範囲と見なされるべきである。